[Final Fantasy VII Remake]開発者、北瀬佳範氏へのインタビュー
GameSpot の記事を翻訳いたしました(個人名は原文のままです)。
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特集記事 ファイナルファンタジー7リメイク開発者語る
現世代のための物語であってほしい
「『Final Fantasy VII』(以下、FF VII)は、オリジナルのままであったとしても、
過去からのものとして記憶されるだけのゲームです」
Edmond Tran on March 2, 2020 at 1:00AM PST
訳者注
この記事の多くが、北瀬佳範氏の発言に費やされています。発言は「」で括られているのですが、より明確にするため、(独自に)薄い背景色を設定しております。ディスプレイの設定によってはわかりづらいかもしれません。
『Final Fantasy VII Remake』(以下、FF VII R)の開発が、2015年に正式に発表さるまで、ファンは、作品が地上から飛び立つという希望を失っていました。というのも、新たなゲームのオープニング(当時の技術で作り直されたもの)が公開されたのは今から10年も前だったからです。
しかし、スクウェア・エニックスの開発者たちはずっとそれに取り組んでいました。監督/シナリオライタの北瀬佳範氏、キャラクターデザイナの野村哲也氏、シナリオライタの野島一成氏など、オリジナルゲームの開発チームの主要メンバは、長い間プロジェクトを動かそうとしていました。
しかし、他のファイナルファンタジープロジェクトとコンソール技術の限界が、障害となっていました。スクウェア・エニックスが常に最も象徴的なゲームの1つを成功裏に復活させ、再開発するための適切なチームを確保するうえでの。
現在、『FF VII R』のプロデューサである北瀬佳範氏は、チームがオリジナルの『FF VII』の制作を開始する前から、すでに人気のあるシリーズを目指してより野心的なことを行い、以前よりも幅広いプレイヤに届くよう努力したと GameSpot に語りました。
「『Final Fantasy VI』を終了し、『FF VII』の作業を開始したとき、このゲームのために日本国外に進出したいという考えが頭の中にありました」
と北瀬氏は通訳を介して回想しました。
「最終的にはこれほど大きなものになるとは思っていませんでした(編集部注:『FF VII』は引き続き1,230万以上が販売され、シリーズで最高のパフォーマンスを発揮しています)。 しかし、私たちはこれを世界に広めたいという情熱を持っていました。前作である VI よりはるかに国内向けのタイトルでありましたが」
より幅広いプレイヤに影響を与えるための最重要事項は、ソニーの PlayStation (の高い性能)を活用することでした。また、それは、シリーズの以前の象徴的なピクセルアートの外観に何を意味するかを考えていました。
「チーム内では、その移行を行う際に適切なスタイルについて多くの議論がありました」
と北瀬氏は言いました。
「私たちは何ができるかを見るために、SIGGRAPH のような多くの国際的な CG イベントに行きました」
「これらの議論は制作開始まで続いていました。(スタッフの間で)多くの異なる意見がありました。明らかに、『ファイナルファンタジーは2Dタイプのゲームとして進化するべきです』と言っていた人たちがいました。(当時)その古典的なスタイルで行われているゲームがまだあり、そこに少し進化の余地が残されていたので、それは明らかな選択肢でした。
また、次のようなことを言う人たちもいました。
『多分私たちはハイブリッドスタイルを採用するべきです。背景を 3D 化することができます。 そして我々は引き続き、キャラクタをビルボードスタイルの 2D アニメキャラクタとします』(『サガ・フロンティア』と『グランディア』は、ほぼ同じ時期に発売されましたが、このスタイルを使用したいくつかの注目すべきタイトルでした)。
しかし、結局、採用されたグループの意見は、
『いいえ。ゲームにオールインする必要があります。キャラクタ、背景はすべて完全な3Dである必要があります』
でした。それが(制作の)方向が本当に決定された瞬間でした」
「その結果、『Final Fantasy VII』は、コンソールゲームのテクノロジィ競争の最先端にありました。当時は、ムービー(FMV)の注目すべきカットシーンに驚嘆するためだけにプレイする必要があったゲームの1つでした。少なくとも、私の身近なところではそうでした。
もちろん、VII は他のファイナルファンタジーのタイトルほど優雅に熟成しておらず、おそらくチームが長い間待たなければならなかったのは偶然でしょう。技術的飛躍は今やはるかに高くなり、リメイクされたゲームを見ると、その影響はさらに驚くべきものになりました」
「オリジナルと現在行っていることの共通のテーマの1つは、新しいテクノロジィを使用してキャラクタをより表現力豊かにするというアイデアです。これが、元々ポリゴンキャラクタに移行した主な理由の1つでした。 2D スプライトよりもはるかに表現力を豊かにします。これは、『FF VII R』でもほぼ同じです」
今回のリメイクでは Unreal Engine 4 で実行され、スクウェア・エニックスのチームはカスタムの修正と機能強化について Epic と協力しています。
「多くの新技術は、キャラクタ、表情、はるかにダイナミックで信憑性(リアリティ)を高めることに向けられています。これにより、より多くの感情を表現できるようになっています」
新しい技術の中には、AI システムの使用を中心に展開するものがあります。AI システムは(プレイヤの)最終的な攻撃や(戦闘)環境の状態をもとに、臨機応変な敵のデスアニメーションを生成します。
また、各キャラクタの口の動きをカスタマイズして同期させるものがあります。英語、日本語、またはゲームの(設定された)言語のセリフの数にかかわらず、声優のパフォーマンスに正確に対応します。
しかし、『FF VII R』は単なるグラフィカルなオーバーホールではありません。
このプロジェクトのニュースに注意を払っている方はご存知かと思いますが、チームは旧作にあったマテリアルを大幅に拡張することを決定しました。また、完全なアドベンチャ(ストーリィ)が分作となってリリースされます。序盤であるミッドガル編のリリースは間近です。
ゲームの最初の数時間で私(記者 Edmond Tran)が見たものから、それは物語の最初のビートを大いに熟考しました。(旧作で)数分で過ぎ去っていったシーンは、1時間以上かかる場合があります。リリース以来、愛されてきたキャラクタには、より多くの時間が費やされます。
しかし、全ストーリィのうち(まだリメイクされていない)他の90%についての言及に、スクウェア・エニックスは熱心ではありません。この時点での感想ですが、さらに数十年を要する可能性があります。
これは長年のファンが望んでいたものですか?それも問題ですか?
「ファンは私たちよりもフランチャイズに精通しているかもしれません。彼らはかつてゲームをプレイし、それ以来戻ってきています」
と北瀬氏は語りました。また、チームは
「オリジナルのゲームのどの特定のシーンが記憶に残るか、どのシーンが人々が見たかったのか、そこにとどまったのかを見つけるために、人々のコメントと意見をインターネットで探しました」
とも説明しました。
「しかし、元のゲームを100%、1対1でリメイクする場合は、ストーリィをそのままにして、何も変更しないでください。
と、みなさんはそれを好むと思います。 『ああ、そうだ、これを覚えている。これは素晴らしかった、ノスタルジックだ』というように。そしてそれがあなたが体験するすべてです」
「私たちは人々の期待に応え、彼らが見たいものを提供しなければなりません…。しかし、私たちはそれを超えて、彼らの期待を本当に上回り、新たな驚きも与えなければなりません。
と私たちは非常に注意していました…それは単に『ええ、それは素晴らしいゲームでした、私はこれを覚えています』で止まりません。さらに進んで、新しい体験を提供する必要がありました」
新しい体験の一部であり、『FF VII』がリメイクされてさらに幅広いプレイヤに届くようになったことの理由の一つは、戦闘システムの根本的な現代化にありました。そして、RPGファンはいまだに優れたターンベースのバトルシステムを愛していますが、リメイクの「選択肢」には決してありませんでした。
北瀬氏は、
「Final Fantasy フランチャイズ全体のファン層の変化する好みに関係していると説明しています。現在、若いゲーマがたくさんいます。彼らはその非常に直感的なアクションゲームスタイルのコントロールが好きです。
以前の『FF VII』をプレイしたことのないまったく新しい世代が存在します。(リメイク作が)ハードなアクションを洗練することに焦点を当てているのは、彼ら新しい若いプレイヤが、『それに精通していて、その期待していること』に応えるためです」
と説明しています。
しかし、これはすべて、『FF VII』の記憶に残るキャラクタと強力なテーマ(環境主義、テロリズム、生と死など)が確実に生き続けられるようにするために役立っています。今作がリリースしている VII の世界のテーマを考えると、間違いなくこれまで以上に(現代社会に)関連性があるように見えます。気候変動と急進主義はすぐに頭に浮かぶかもしれません。
ただ、北瀬氏はリメイクの相関関係を強調したり、強調の度合いの増加について話すことをためらいました。
「明らかに、それはまだファンタジィの世界です。ファンタジィゲームであり、魔晄エネルギーとライフストリームの概念は非常にファンタジィの概念です。
私たちは、ゲームを通じて特定のことについてコメントしたり、具体的なこと言及するつもりはありません。それを通じて世界の問題、私たちはより時代を超えた普遍的なテーマを作ろうとしています」
しかし、それはすべて、プレイヤが知的に関与することを望んでいないということではありません。
「『FF VII』でこれらの問題に取り組む方法を人々に見てもらいたいし、彼らにとって重要な問題のいくつかとどのように共鳴するかを見たいと思っています。しかし、私たちはそれを親切にしておくことによってのみそれを行うことができます。
私たちが今示しているもののリアリズムははるかに高くなり、私たちが物事を描写する方法は今では非常に異なっています。ですからこの新しい描写により、現在の人々が、メッセージをどのように以前と違った受け止めをするのか、本当に見たいです」
『FF VII R』プロジェクトの終わりを見るまでは確かに長い道のりであり、北瀬氏は最初のパートがリリースされたら彼とチームは、休む間などないだろうと私に言いました。
「おそらくすぐにそれ(制作)に入るでしょう」
しかし個人的には、彼は残りのキャリアでリメイクに取り組む必要があることを心配していません。
「それは非常に重要なことだと思います」
北瀬氏がこれまでに手がけたすべてのゲームの中で、『FF VII』はまだ彼の個人的なお気に入りです。しかし彼の、「スクウェア」での最初のプロジェクト、聖剣伝説(英語圏では『Final Fantasy Adventure』として知られています)も特別作品として位置付けられています。
また、彼は過去に、『クロノ・トリガー』、『Final Fantasy VI』など、非常に高く評価されている他の多くのタイトルに取り組んでいますが、彼は他にどのようなリメイクを検討するかについてのヒントをくれません(「仮に私が冗談を言っても、一瞬にしてそれが世界中に知れ渡ります。それについて何かを言うのは危険すぎる」とのことです)。
そして、ファイナルファンタジーの世界において、人々がチョコボを食べるかどうかについても明言を避けるでしょう(「それは今のところ秘密だと思う」としました)。『FF VII』は、彼が予見可能な未来のために焦点を当てるすべてです。
「『FF VII』という作品が、オリジナルのままであったとしたら、過去の何かとして記憶されているだけで、人々はそれと関わりを持たないでしょう。愛され続け、将来の世代によって更新し続けられなくてはなりません。そのために私たちが今、リメイクを行いました。
そして、10年後、20年後、再びその必要に迫られるかもしれません!
だから、これが私にとって最後の仕事であったとしても失望することはありません」
補足 SIGGRAPH(シーグラフ)
は、アメリカコンピュータ学会におけるコンピュータグラフィックス (CG) を扱うSIG(分科会)です。
また、また同分科会が主催する国際会議・展覧会の一つである「International Conference and Exhibition on Computer Graphics and Interactive Techniques」の通称でもあります。
つまり、この会議には、学術的なプレゼンテーションと業界見本市の両方が組み込まれています。
この会議の発足は、1974年で、ボルダー (合衆国コロラド州)で行われれました。参加者は、600人とされています。
また、2008年からは、冬にアジア地域において SIGGRAPH ASIA が開催されています。こちらは年次会議です。
補足 デスアニメーション(death_animation)
カタカナ表記でも理解できますが、撃破シーン(の演出)、のことです。
補足 FMV(full motion video)
日本では、ムービー、または、また、プリレンダリング映像とも言います。ゲーム用語としての用いられる場合、ゲーム内で再生される何らかの映像を指します。
基本的には、ストーリィ進行の際の演出として用いられます。
ムービーの多くは、3DCGで制作されたものですが、2Dのアニメーションや実写映像も含みます。
データ容量が非常に大きいため、ゲームのメディアに CD-ROM が採用されるようになってから現実的になりました。
英語では
- Cutscene(カットシーン)
- Cinematics(シネマティクス)
とも呼ばれます。
補足 危険
スクウェア・エニックスの株価を左右する、といっても過言ではないかと思われます。
補足 株式会社スクウェア
1986年9月設立。
1987年にファミリーコンピューター用ソフトとして発売された『ファイナルファンタジー』は大ヒットし、以後、会社は大きく成長しました。
その後も多数のゲームを開発し、様々なハードで数多くのヒット作を生み出しました。
2003年(平成15年)4月1日、エニックスと合併し、現在のスクウェア・エニックスが誕生しました。
超大河ドラマ!